指紋認証式電気錠の制作

きっかけ

ある事情によりかなり前から電気錠を作りたいと思っていたのですが、認証方式としてキーパッドによる暗証番号もしくはRFIDタグを用いた非接触認証を考えていました。しかしこれらの認証方式はハイテク感があまりなく、非接触の認証もやSuicaや各種電子マネーなど非接触ICカードの普及により珍しくないと思います。いよいよ作らないといけない時期になってきて、ふとデジットBlogの指紋スキャンモジュールの記事を発見してこれだ!と思いました。

この「GT-511C1」の製造元はADH Technology社で、CMOS光学センサや32ビットARMマイコンを搭載したモジュールです。SmackFinger 3.0という技術を搭載しており、このモジュール単体で20件までの指紋が登録でき、1:NのIdentify(識別)と1:1のVerify(検証)が可能です。

指紋認証を実現するには指紋の読み取りに加えて指紋の特徴検出技術が必要で、個人ですべてを実装するのはかなり敷居が高いです。一方、指紋認証自体はノートパソコンやスマートフォンで広く採用されており個人で作れたらいいなという憧れもあります。個人レベルの工作でもこのようなシステムを実用レベルで作れるという本当に良い時代になったと思います。

回路

このモジュールの制御にはUARTによるシリアル通信を使いますので、AVRやPIC、ArduinoといったUSARTインタフェースを持つマイコンで簡単に制御することができます。今回はATmega168を使いました。周辺回路としては、表示用の7セグメントLEDと動作音のための圧電スピーカーとソレノイド、スイッチを設けています。ソレノイドでロック機構を動作させます。ソレノイドは6VのものでFETで駆動します。

以下は回路図と実験中の様子です。

f:id:jptomoya:20140117223959p:plain

指紋認証式電気錠のメインボード

課題

制作してみて思ったことですが、まず3端子レギュレータを利用しましたが省電力の面で不利です。この回路だと電池動作は望めません。指紋スキャンモジュールのUARTインタフェースは電源電圧に関わらず3.3V系です。設計時の考えでは電源を6Vとし、3端子レギュレータを使って3.3Vに降圧して指紋モジュールとAVRの電圧を一致させて動作させればシリアル線を直結できるため都合が良いと考えました。しかし、μPC2933Bは無負荷時の電流が2mA程あるそうなので電池動作に向きません。例えばAVRを5Vで動作させてもTx側を分圧してからRxに繋げば相手が3.3Vでも問題ないでしょうし、Rxはそのまま繋いでもピンがHIGHと認識される最低保証電圧である0.6Vccを超えますのでこれも問題ありません。

またプログラムの開発過程で気づいたことですが、AVRのクロックに水晶を取り付けたものの、内蔵発振で十分動作したのであえて水晶を使う意味はないと思います。

これらを踏まえると、3端子レギュレータや水晶を省略すれば基板の小型化が可能で、ソレノイドは消費電流が大きいとはいえ間欠動作であるため電池運用の道も見えてきそうです。